なぜ旬のものを食べるのか?旬のものの機能

旬のものを食べる、とよく言われる。旬のものをおいしく食べるレシピも沢山紹介されている。

しかし、なぜ旬のもの、というものが存在するのだろうか?単に季節を感じるためだけなのだろうか?別に知らなくてもいいことだが、なぜこの時期にそれを食べるのかを知っていると、食べるのが少しだけ楽しくなるかもしれない。

ここでは、そんな旬のものをなぜ食べるのか、その理由の一部分をご紹介する。


1.なぜ旬のものを食べるのか?

結論から申し上げる。その時期に不足する栄養を補ったり、体を維持するのに必要な機能を補うするためだ。
もちろん、その時期に一番おいしく収穫できる、ということもある。

それに、単に

  • おいしいから

だけでは、他にもおいしいものがいくらでもある中で、何故わざわざそれを食べるのか、の理由がわからない。

2.旬の特徴

旬のものには、それぞれ特徴がある。ここでは、これを書いている「秋」の旬のものについてご紹介する。

2-1.秋の旬の目的

大きく分けて二つ

    • 夏の疲労回復
    • 冬への備え

2-2.味

      • 甘み

2-3.疲労回復

甘味は疲れた体に速攻性があるが、これは夏の暑さによる疲れでも同じだ。秋の甘味で夏の疲労からの回復をねらう。

2-4.胃腸の回復

全般的にからだにやさしく、夏の、辛みや塩味の効いた料理で疲れ気味の胃や腸の調子を整えてくれる。

2-5.免疫力の回復

疲れると、免疫力が低下する。疲労回復と併せて免疫力を回復する。

2-6.次の季節への準備

寒い冬へ向けての栄養貯蔵を行うとともに、寒くなる前に、エネルギーを貯蔵する働きを担う。この時期の作物には、自身が越冬するために体を作るものがあるので、その養分をいただくことで,私達の体の中にも蓄積型養分を作り、冬に備えることができる。

2-7.食材それぞれの役割

夏に弱った胃腸の調子を整える働きを野菜が、冬に向けての栄養貯蔵の働きを、脂肪の多い木の実や魚ならびに野菜がそれぞれ受け持ち、担う。

乾燥する季節に備えて、粘膜や皮膚の健康を維持し、のどや肺などの呼吸器を守る。

そして、自然の恵みをたくさん摂れる。しっかりと食べて、冬に備える。

3.旬の食材の機能と役割

秋には冬に備えて脂肪の多い木の実や魚が旬を迎え、夏に弱った胃腸の調子を整えてくれる、やさしい作用の野菜がおいしくなる。

ここからは、我々がよく口にする「あの食材」のもつ役割、機能についてご紹介する。

3-1.野菜類

3-1-1.特徴

穀物やいも類、果物など甘味があり、糖類や脂肪を多く含む食材が多い。寒くなる前にエネルギーを蓄積する働きを担う。自然の恵みをたくさん摂れる時期。適量を心がける。
脂肪の多い木の実は、冬に向けての栄養貯蔵の働きを受け持ち、担う。

3-1-2.根菜

      • じゃがいも、さつまいも
        • 主成分 炭水化物
        • 食物繊維 便通を整えたり、コレステロールを体外に運び出す働き
        • ビタミンC でんぷんに包まれているので、加熱しても壊れにくい 果物と同じく、夏野菜にかわるビタミンCの補給源。ジャガイモのほうが、さつまいもよりも少し多い。
          貯蔵とともに減少する。収穫したての、旬のものがもっとも多い。
        • カリウム 体内の塩分のバランスを調整。汗で失われたミネラルバランスの調整役
      • 里芋(さといも)
        • ぬめり成分ガラクタンが高血圧予防やコレステロールの抑制、内臓を強化。ぬめりは落とさないようにする
      • 長芋 山和芋(いちょういも)
        • 食物繊維、代謝促進。
        • 粘りの成分であるムチンは疲労回復。
        • 塩分の排泄を助けるカリウム 発汗で乱れたミネラルバランスの調整
      • 牛蒡(ごぼう)
        • 食物繊維 便通を整えたり、コレステロールを対外に運び出す働き
        • イヌリン 春菊などにも含まれるが、特に多く含まれる。血糖値改善、ビフィズス菌の成長を促し、整腸効果
      • 人参(にんじん)
        • β-カロテン  抗発ガン作用や免疫賦活作用 体内でビタミンAに変換される。油で調理すると吸収されやすくなる。
          髪の健康維持、視力維持、粘膜、皮膚の健康維持、のどや肺など呼吸器系統を守る 乾燥する季節にむけて、重要な器官を守る効果
      • 蓮根(れんこん)
        • でんぷん、冬にむけての準備
      • 玉葱(たまねぎ)
        • 炭水化物が主成分 ビタミン、ミネラルは少ない
        • 臭い成分 硫化アリル 消化液分泌促進 新陳代謝促進
          血液さらさら効果 高血圧、糖尿病に高い効果
          調理では、肉や魚の臭いを消す効果

3-1-3.葉物

ブロッコリー、カリフラワーなどの巻きもの野菜は、体の中に養分を蓄えて冬に備える。

      • ブロッコリー
        • ビタミンc グラムあたりでは、レモンよりも多い。疲労回復、かぜ予防、ガン予防、老化防止
        • 葉酸が豊富に含まれる
      • カリフラワー
        • ビタミンC 疲労回復、かぜ予防、ガン予防、老化防止
        • カリウム ナトリウム排泄促進、高血圧予防、長時間の運動による筋肉けいれん防止 不足すると、筋肉が弱る
      • 春菊(しゅんぎく)
        • β-カロテン 抗発ガン作用や免疫賦活作用
          体内でビタミンAに変換され、髪の健康維持や、視力維持、粘膜や皮膚の健康維持、そして、喉や肺など呼吸器系統を守る働き
        • カルシウム、マグネシウム、りん、鉄分などミネラル
        • カリウム ナトリウム(塩分)を排泄する役割 高血圧に効果 長時間の運動による筋肉の痙攣などを防ぐ
        • 香り 自律神経に作用、胃腸を活性化、咳、痰を押さえる
      • チンゲン菜
        • β-カロテン
        • カリウム ナトリウム(塩分)を排泄する役割があり、高血圧に効果 長時間の運動による筋肉の痙攣などを防ぐ働き
        • カルシウム 骨を生成する上で欠かせない成分 イライラの解消にも効果あり
        • ビタミンC 風邪の予防や疲労の回復、肌荒れなどに効果がある

3-1-4.きのこ類

      • しいたけ
      • しめじ
      • 舞たけ(まいたけ)
      • マッシュルーム
        • β・グルカン 免疫力アップ、がん予防にも効果的。
        • 食物繊維豊富
        • 低エネルギー
        • 夏の疲れで弱った免疫力の回復
        • 食物繊維による便通の調整とコレステロールの排泄

3-2.果物

      • かき
        • 美肌&かぜ予防、二日酔いにも効く
        • 1個で1日分のビタミンCやカロテンをたっぷり含むため、古くから民間薬として利用されている。アルコールを分解する酵素も含んでいるので悪酔い防止、二日酔いの緩和に役立つ。
        • カリウム ナトリウム(塩分)を排泄する役割があり、高血圧に効果 長時間の運動による筋肉の痙攣などを防ぐ働き
        • ビタミンA 髪の健康維持や、視力維持、粘膜や皮膚の健康維持、そして、喉や肺など呼吸器系統を守る働き
      • なし
        • アスパラギン酸 夏バテなど疲労回復
        • ソルビトール 冷涼感のある糖アルコール 咳止め、解熱効果
        • プロテアーゼ 消化酵素、タンパク質分解 調理に使えば肉をやわらかくできる 食後のデザートで消化を助ける
        • カリウム ナトリウム排泄促進 高血圧対策 カリウムは汗とともに流失しやすい 残暑などで汗をかいたときには水分とともに補給できる
        • ビタミンC あまり含まれない
      • ぶどう
        • ブドウ糖 夏の疲れからの疲労回復
        • ポリフェノール 特に皮や種の部分に多く、ガンや動脈硬化の予防に効果

3-3.木の実

      • ぎんなん、落花生、くり

脂肪の多い木の実は、冬に向けての栄養貯蔵の働きを受け持ち、担う。

3-4.魚

      • さんま
        • 夏バテ回復
        • 血液サラサラ効果
        • EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸) 動脈硬化などの生活習慣病予防に効果的。
        • タンパク質、ビタミン、カルシウム、鉄など栄養バランスも抜群。
        • 産卵を控えた9月下旬~10月ごろが一番脂がのっておいしい時期。脂をとって、冬に備える。

4.旬の持つ機能

ここまでお読みいただいてお気づきになったと思うが、トマト、キュウリなどの、いわゆる夏野菜は入っていない。これは、旬のものには、これらの持つ機能に取って代わる機能があることを意味すると同時に、寒くなる時期に水分の多い夏野菜をとると、体が冷えてしまう。

4-1.必要な栄養素は旬のものからとれる

たとえば、ビタミンCというと、トマトが代表だ。トマトは、暑さで奪われたビタミンCを補給する役目をもつが、同時にほてった体を冷やす作用がある。ビタミンCは補給したいが、体は冷やしたくない。であれば、秋はサツマイモ、ジャガイモや柿などから、体を冷やすことなくとれる、というわけだ。そして、水分を多く含み、火照った体を冷やす機能のトマトは、秋の旬からはずれ、積極的にはとらない方がよいことがわかる。

4-2.旬のものには、イメージ以外の機能がある

さらには、糖質や繊維分のイメージしかない芋類も、じつはミネラルやビタミンCの補給源だったり、焼くと火柱が立つくらい脂がのったサンマはミネラル、ビタミンの補給源だったりと、いままで何気なく食べていた食材には、実はその時期に必要な、多彩な機能があることに驚かされる。

一方で、これも季節に関係なく、何気なく食べていた食材が、旬のものを上手に利用すれば、実は積極的にとらなくてもよいことがわかる。

たとえば、水分を多く含み、夏の高温でほてった体を冷やす機能をもつ夏野菜は積極的にとる必要がない。それらに含まれている栄養は、旬のもので十分まかなえる。

「秋なすは嫁に食わすな」という。この言われも、旬のものと、その時期に必要な機能、積極的には必要でない機能をあわせ考えれば、納得できる。

まとめ.

いかがだろうか?旬のものの特徴、機能から、なぜそれがその時期においしくなり、たくさん出回るのかが何となく見えてくる。

そして秋の旬は、夏の疲れからの回復と、冬えの備えの二つの役目がある。キーワードは、エネルギーの貯蔵と、保温、保湿だ。

このように、旬のものをたべるのは、もちろんおいしいものが食べられるのと併せて、さまざまな機能がある。

今は食べたいものがすぐに手に入るようになっているが、その時期に積極的に食べない方がよいものがわかれば、時期に合わせた体調管理方法も見えてくる。

上手に旬を利用し、上手に季節とつきあいたい。

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