ビタミンCは、免疫力を高めたり、抵抗力をつけたりと、健康の維持に欠かせない栄養素だ。その特徴として、加熱すると壊れやすい。
しかし、一方でフライドポテトに含まれるビタミンCは、生のものよりも多いのだ。これは、単に加熱で壊れやすい、ということだけでは説明できない。
ここではビタミンCの、加熱により壊れることについて調べた結果をご紹介する。
1.ビタミンCの性質
ビタミンCは、一般につぎのような性質を持つことが通説として知られている。
- 水溶性 水に溶けやすい
- 熱 熱が加わると壊れる
水に溶けやすいということは、油には溶けにくい、ということ。
2.加熱してもビタミンCが破壊されにくい食材
一方、加熱してもビタミンCが破壊されにくい食材がある。
2-1.ジャガイモ、サツマイモ
ジャガイモ、サツマイモは実はビタミンC豊富に含んでいる。そして、これらに含まれるビタミンCは、の含まれ方に少し工夫が施されている。それは、デンプンにより守られているのだ。
2-2.ビタミンCがデンプンにより守られている
これを理解するには、なぜ加熱により破壊されるのか、その仕組みを理解する必要がある。なお、ここからは、説明がかなり面倒くさくなるが、どうぞお付き合いいただきたい。
2-3.加熱によりビタミンCが変化するしくみ
ビタミンCは、通常酸素と接触すると、酸化が始まる。酸化すると姿を二回変え、最終的にはビタミンCではないほかの物質になる。この変化が、常温であればゆっくりとすすんでいく。
しかし、熱が加わると事情が一変する。熱により、酸素や水との反応が一気に加速され、常温よりも短時間で酸化されてそのほとんどが全く別の物質に変化する。
二回変化した物質はもはやビタミンCに戻ることはない。この現象を一般に「ビタミンCは熱に弱い」と表現する。
2-4.酸素を絶つと変化しにくくなる
ところが、ビタミンCを酸素と接触しないようにして熱を加えると、ほとんど酸化しない。つまり、「ビタミンCは熱に弱くない」現象が生じる。
これは、フライドポテトがビタミンCを豊富に含んでいることと一致する。フライドポテトは、油で揚げて作る。油は沸騰水(熱湯、100℃)よりも温度が高い(150℃~180℃)。一般的に理化学反応は温度が10℃上がると、反応の速度が2倍速くなる。
沸騰水よりも50℃高ければ、2の五乗で、32倍速くなるはずなのでほぼ全滅と考えられるが、実際にはフライドポテトはビタミンCの宝庫なのだ。
これを説明するには、
- 油により酸素との接触が経たれた状態で熱を加えると、ビタミンCは変化しない
ことを用いればよい。
でんぷんにより、ビタミンCが守られる、というのは、このことを指している。
2-5.でんぷんが酸素との接触を制限している
つまり、でんぷんにより守られていると、酸素との接触が制限される。そのため、酸化されにくく、加熱調理しても変化せずに残る量が多いのだ。
これらのことより、一般に言われている「ビタミンCは熱に弱い」は、厳密には誤りで、本当は
- 酸素と接触しやすい状態では熱に弱い
ということになる。
ちなみに、変化した物質は体内でビタミンCのような物質に変化するが、これはもはやビタミンCではないので、ビタミンCと同じ性質、機能は持たない。
2-6.温水に溶けやすい
水に溶けやすい物質は、加熱するとさらに溶けやすくなる。野菜をゆでると、ビタミンCが失われる、という現象だ。
ビタミンCが水の方へ溶け出し、さらには水に溶けたビタミンCがもともと溶けている酸素や、水面から入ってくる酸素と反応して全く別の物質に変わってしまう。
この変化をできるだけ抑えるには、加熱調理時間を短くし、できたものはなるべく早く冷ますのが望ましい。しかし、温かい料理を冷やすなんてことは普通しないので、加熱調理をする際には、水でゆでる以外の方法をとったほうがよい。
3.ビタミンCを含む食材を加熱調理する方法
3-1.皮付きのままが良い
酸素や水との接触を絶ったまま調理するには、皮付きのままの調理が最もよい。そして、われわれはその良い例を実はすでに知っている。それは、石焼き芋だ。
冬の風物詩である石焼き芋は、皮付きのまま焼き石に投入する。あたりまえなのだが、これがビタミンCが温存される秘密だったのだ。これは先の事実と一致する。
だから、ふかしイモにする場合も、皮付きのままふかしイモにして、できてから切り分ける。できれば、食べる直前に切り分けたほうがよい。
3-2.天ぷら
このように考えてくると、天ぷらは理想的な食べ方だ。なぜなら、衣により酸素や水との接触が絶たれる。
カロリーが気になるのであれば、衣を外して食べる。天つゆにつけると、ビタミンCが漏れるので、塩で食べる。加熱されているので、体を冷やすこともない。
3-3.ブロッコリー、カリフラワー
これらも、丸ごとゆでてから、直前に切り分けるのがよい。切り分けてからゆでると、切り口からビタミンCが漏れるし、温水と接触することでもビタミンCが変化する。
3-4.れんこん
れんこんは、根菜類のなかで最もビタミンCの含有量が多い。しかし、加熱調理すると激減する。何故だろか?
これは、調理方法に原因がある。レンコンは、切ってから調理するのが普通だ。すると、切り口からビタミンCが漏れる。
さらに悪いことに、れんこんは穴が開いているので、穴のない根菜類よりも、酸素や水に触れる面積が広い。そのため損失がおきくなるのだ。
だからレンコンも、できれば切り分けずに調理するのが良いだろう。
3-5.トマト
皮ごと焼いたり、ゆでたり、皮ごと加熱すれば酸素や水との接触が最低限に抑えられるので、ビタミンCが温存されるイメージがあるが、トマト自身がもつ水により変化する可能性がある。これについては、実験された方がいらっしゃらいないようなので、なんとも言えない。
これを裏付ける状況証拠として、ジャガイモのビタミンC含有量は、収穫直後が最も高く、時間が経つにつれて低下するというのがある。でんぷんに守られていても、自身の持つ水によりゆるやかに変化していると考えると納得がいく。
このことより、トマト自身の持つ水が加温されるので、常温よりも早く変化することは十分に考えられる。
4.まとめ
いかがだろうか?ビタミンCは、加熱すると変化して別の物資になるが、いつでも変化するわけではない。酸素や水と接触させなければ加熱してもそれほど問題はないのだ。
加熱によるビタミンCの変化のしくみをきちんと知ると、ビタミンCを加熱して摂る方法が見えてくる。
ビタミンCというと、生オンリーのようなイメージがある。変化の仕組みをきちんと知って、体を冷やさずにビタミンCを摂るようにしたい。
ウシマツさん、すばらしい情報をありがとうございます。ビタミンCは熱に弱い、と一般に言われていますが、必ずしもそうではない、という知見もあり、本当のところはどうなのか、自分で調べようと思っていました。そこへこの情報です。非常に説得力ある内容で示唆に富みます。
長谷川様
お読みいただきありがとうございます。
いろいろな情報を整理し、並べなおしただけですが、お役にたてたようで光栄です。
今後ともよろしくお願いいたします。
解りやすい解説ありがとうございます。
ビタミンCが壊れる。
その意味を知りたかったのです。
正確には変質や分離などを経るとは思いますが、何かに変わるということ。
何になるのかが気になりましたが、酸化により変化することが解り、良かったです。
ありがとうございます。
しん様
お読みいただきありがとうございます。
管理人でございます。返信させていただくのが遅くなり申し訳ございませんでした。
今後ともよろしくお願いいたします。
管理人