あなたはビタミンCと聞いてなにをイメージされるだろうか?
- みずみずしいトマト
- さわやかな香りのレモン
- こたつで食べるみかん
いろいろとあるだろう。そして、これらには共通するものが一つある。それは「生」だ。ビタミンCは、
- 生野菜やよく冷えた果物からとる
というイメージが強い。間違っても熱々の料理、ましてや揚げ物からとる、という方はほとんどいないだろう。
ところが、野菜を生で食べると、たとえばトマトはビタミンCがとれるがその豊富に含まれる水分により、体が冷やされる。暑い夏には適しているが、秋以降、涼しくなるとアンバイが悪い。
これらのイメージは、ビタミンCの持つある性質からきている。それは
- 熱に弱い
ということだ。一般的な通説では
- ビタミンCは加熱により壊れる
とされている。ところが、この通説に反する例が存在する。それは、石焼き芋であり、フライドポテトだ。
これらはかなり強力に加熱されている。加熱されているので本来壊れるべきものが、壊れるどころか、かなり豊富に含まれる。この事実は、先の通説では全く説明できない。
そこで生じる疑問は、
- ビタミンCが壊れるためには、熱のほかに条件があるのではないか
というものだ。
熱に弱いビタミンCが、条件によっては熱を加えても壊れない、となるとビタミンCのとり方が変わってくる。
ここではそんな、「熱に弱い」ビタミンCをもっと効率よくとる方法をご紹介する。
1.熱で壊れないビタミンC
熱を加えても壊れないビタミンCがある。といっても、新しく発見されたものでもなんでもない。
それは、
- でんぷんで守られたビタミンC
だ。でんぷんで守れたビタミンCは熱を加えても壊れることはない。
といっても、でんぷんに耐熱性があるわけでも何でもない。これには、「ビタミンCの壊れ方」が関係している。
2.ビタミンCの壊れ方
ここからしばらく、面倒くさい説明が続く。かなり面倒くさいが、お付き合いいただきたい。
2-1.酸素に触れると酸化する
まず、ビタミンCは酸素と触れると、酸素により酸化される。酸化されると、ビタミンCはビタミンCではないほかの物質になる。ひとまずこれを物質Aと呼ぶ。
そして、この物質Aが酸素によってさらに酸化されると、次には物質Aとは違う物質にさらに変わる。この物質Aからさらに変わった物質を物質Bと呼ぶ。
2-2.二回酸化されると壊れる
先の物質Aは、体内で還元という変化を受けてビタミンCに戻ることができる。しかし、物質Aから変わった物質Bは、もはや物質Aに戻ることはない。
この物質Bまで変化することを「ビタミンCが壊れる」という。物質Aで止まって体内に入れば、ビタミンCに戻るのだから、この変化は「ビタミンCが壊れる」とは言わないのは問題ないだろう。
2-3.温度が高いと酸化のスピードが速くなる
これらの変化は、実は常温でも起きる。すなわち、ビタミンCを酸素と接触させて長時間そのままにしておくと、すべてが物質Bになってしまう。ただ、それに要する時間はものすごく長い。何分、何時間というレベルではない。何日、何ヶ月というレベルだ。
ところが、このビタミンCと酸素を接触させた状態に熱を加えると、これらの変化が急に加速し出す。すなわち、かなり長い時間かかっていた反応が数分、数時間というレベルになるのだ。
この、
- ビタミンCと酸素を接触させて加熱すると、物資Bに急速に変化する
というのが、我々がよく耳にする
- ビタミンCは熱に弱い
の正体だ。
2-4.酸素がないと酸化しない
一方、この状態から酸素を取り除くと反応が止まる。というか、進行しなくなる。酸化という反応は、酸素があって初めて起きる反応だ。だから、酸素がなければビタミンCは酸化されない。すなわち、壊れることはない。
そのため、ビタミンCを酸素に触れないようにして加熱しても、酸素がないため酸化されないので、物質Bはおろか物質Aにすら変化しなくなる。
ここでわかるのは、
- ビタミンCを酸素に触れないようにすれば壊れることはない
ということだ。
2-5.でんぷんは、ビタミンCが酸素に触れるのを防ぐ
そして、このビタミンCと酸素の接触を断つものがでんぷんなのだ。でんぷんにより守られたビタミンCは、加熱しても壊れることはない。それを裏付ける事実が、石焼き芋であり、フライドポテトだ。
両方とも加わる熱がハンパではない。かたや焼けた石であり、かたや揚げ油だ。両方ともハンパない、かなりの高温である。
かなりの高温であるが、ビタミンCは酸素との接触を断たれているので、壊れずにこれらに残る。
2-6.ビタミンCを熱に強くする方法
以上をまとめると、次のようになる。
- ビタミンCは酸素に触れると酸化する。
- 酸化が進むとビタミンCは壊れる。
- ビタミンCを酸素に触れさせて加熱すると、酸化するスピードが速くなり、壊れるスピードも速くなる。
- 酸素に触れているビタミンCは熱に弱い。
- ビタミンCは酸素に触れなければ酸化しない。
- 酸化しなければ壊れることはない。
- ビタミンCは酸素に触れなければ加熱しても酸化することはない。
- 酸化しないのだから、ビタミンCは酸素に触れなければ加熱しても壊れることはない。
- 酸素に触れないようにしたビタミンCは熱に強い。
このことから、ビタミンCのとり方を変えることができる。すなわち、なるべく酸素に触れないようにして加熱すれば、ビタミンCを壊れにくくすることができるので、ビタミンCを温かい状態でとることができる。
つまり、これまで生で食べていたビタミンCを含む食材は、工夫次第では温かくして食べることができる、ということだ。そしてその工夫とは、皮付きのまま、丸ごと温める、という方法だ。
3.ビタミンCを温かい状態でとる工夫
3-1.さつまいも
丸ごと加熱する。代表的なものとして石焼き芋がある。そのほかには
ふかし芋は時間がかかるが、切り分けずにふかす。ふかし上がってから切り分ける。できれば、食べる分だけ切るほうがよい。
天ぷらにする際に水に漬けるが、長くつけず、切り口を洗う程度でよい。
3-2.じゃがいも
ふかす場合には、切れ目を入れずにふかす
天ぷらにする際に水に漬けるが、長くつけず、切り口を洗う程度でよい
3-3.トマト
皮をむかずに丸ごと焼いたり、茹でたりしてたべる。その際、ヘタをとらずに、丸ごと調理する。
3-4.みかん
皮をむかずに丸ごと焼き、焼きみかんで食べる。
3-5.ブロッコリー、カリフラワー
丸ごと茹でて、食べる直前に切り分ける
3-6.大根、かぶ
大根やかぶは、水でゆでる。その際、ビタミンCは水に溶け出るので、ゆで汁もいただくメニューがよい。
3-7.ホットレモン
ホットレモンは、ビタミンCと糖分を同時にとることができるので、疲労回復に有効だが、熱が加わるので壊れているのではないか、という疑問を持っていた方もいらっしゃるだろう。
しかし加熱しても、酸素になるべく触れさせなければ壊れる量を抑えることができる。その工夫としては、お湯を注ぐときになるべく静かに、泡が立たないように注ぐのがこつだ。混ぜるときも静かに混ぜる。
そして、熱いので飲みにくいが、できるだけ早く飲んでしまうことだ。たかがホットレモンだが、こうすることで得られる効果はだいぶ違ってくる。
まとめ
ビタミンCは、健康にとって重要な栄養素だが、熱に弱いといわれているので、冷たいまま食べるしかない、と考えられている。
一方で、ホットレモンや石焼き芋など、熱の加わった調理方法もあり、かたや熱に弱い、かたや加熱されている、ということで混乱されていた方もいらっしゃると思う。
ご紹介したように、ビタミンCが壊れる、その仕組みがわかれば加熱しても壊れることはなく、温かい状態でビタミンCをとることができるようになる。体を冷やさずに、ビタミンCをとることができれば、代謝も下がらないため体調管理にも有効だ。
気温が低くなる季節には、ビタミンCが欠かせない。是非ご紹介したビタミンCの性質を知っていただき、体に無理のない方法でビタミンCをとっていただきたい。