唐辛子を食べるとなぜ食欲が増すのか?

唐辛子を食べると、食欲が増す。唐辛子はダイエット効果があると言われているが、食欲が増してしまうので、プラマイゼロ、そのためダイエット効果は半減、などとも言われる。

それにしても、なぜ唐辛子を食べると食欲が増すのであろうか?食欲が増す、ということは、空腹感がある、ということだが、唐辛子は空腹感と、どういう関係があるのだろうか?

やはり唐辛子の赤や、火が出るような辛さがカロリーの消費と関係あるのだろうか?ここでは、そんな唐辛子を食べて食欲が増す理由についてご紹介する。

なお、かなりの長文で、内容的にもかなり面倒くさくなっているが、辛抱してお付き合いいただきたい。

1.唐辛子を食べるとなぜ食欲が増すのか

結論から申し上げる。唐辛子を食べた刺激に対応するために消費した分と、同じだけのエネルギーを確実に、早く補給するためだ。

2.唐辛子は刺激を与える

唐辛子の成分であるカプサイシンは、胃を必要以上に刺激する。

体は、必要以上の刺激を外敵からの攻撃と認識する。体への攻撃は、緊急事態だ。そのため、その緊急事態に対処するために、アドレナリンを放出し、緊急事態に対処するための準備を始める。

3.闘争か逃走か

緊急事態に遭遇すると、その攻撃にどう対応するか決めなければならない。選択肢は二つだ。闘うか、逃げるか、だ。

闘うのであれば、勝たなければならないので、戦いの準備を始める。

また、逃げるのであれば、一刻も早く安全な場所に逃げられるように準備を始める。

そのときの準備とは、次のようなものだ。

    1. 瞳孔の散大
    2. 心拍数の増加
    3. 皮膚血管の収縮
    4. 血糖値の増加

3-1.瞳孔の散大

光や、目から得られる情報をより多く取り入れられるように瞳孔を大きく開く。

3-2.心拍数の増加

身体機能を向上させるために、心拍数を増加させて心臓から大量の血液を送り出し、血液を体全体に行き渡らせる。

3-3.皮膚血管の収縮

外傷を負っても、大量の血液を失うことがないように皮膚の血管を収縮させる

3-4.血糖値の増加

より多くのエネルギーを得られるように、血液に糖を放出する。

これだけの準備をほとんど一瞬のうちに、同時に行う。その結果、代謝が促されて体温が上昇し、汗をかく。

4.準備には、大量のエネルギーを使う

これらの準備には、もちろんエネルギーが使われる。そのエネルギーには、蓄積されている脂肪などが用いられる。

準備が整い、緊急事態に対処し、緊急事態が終息すると、準備並びに闘争や逃走で消費したエネルギーを補給しなければならない。

このとき、蓄積されている脂肪が引き続き利用されればよいのだが、体はそれをせずに空腹感を覚えさせ、食事を要求する。

食事を要求する理由は、次のようなものだ。

    1. エネルギーは、緊急事態に対処するために消費された。
    2. エネルギーが消費されれば、消費された分と同じ量のエネルギーを補給しなければならない。
    3. 今回消費されたエネルギーは、緊急事態に対処するために消費された。
    4. だから、今回消費された分と同量を、次の緊急事態に備えて補給しなければならない。

この補給は、蓄積されている脂肪でまかなうか、外からの食事でまかなうかの二つあり、できれば脂肪でまかないたい。

ところが、緊急事態は次にいつ来るかわからないし、それに備えて確実に、そして一刻も早く補給しておかなければならない。

この、

    • 確実に、一刻も早く

を満たすためには、脂肪による補給よりも、外からの食事でまかなう方が確実である。そのため、緊急事態が去ると空腹を感じさせ、食事を要求するのだ。

唐辛子を食べて受ける刺激は、命に危険が及ぶものではないため、逃走や闘争は行われない。しかし、必要以上の刺激ではあることに変わりはない。

そして、受けた刺激が何であれ、それに対処するための準備は行われるので、その準備のためにエネルギーが使われる。そして使われた分と同じ量のエネルギーを補給しなければならないため、食事が要求される。

この要求は、空腹ではなく、食欲の増進という形でなされる。そのため、唐辛子を食べると食欲が増進するのだ。

5.緊急用のエネルギー蓄積は、確実に行われなければならない

緊急事態に対処するための準備は、その原因が何であれ緊急事態に対処するための準備だ。そして、そのために消費されたエネルギーは、緊急事態に対処するために消費されたものだ。

緊急事態に備えて消費されたのだから、つぎに来る緊急事態に早急に備えなければならない。そのためには、蓄積脂肪で補給するのではなく、食事で補給する。その方が確実で、速い。

そのため、唐辛子を食べると食欲が増す。

6.唐辛子とダイエット

なお、唐辛子をたべると、エクササイズをしたときと同じように体温が上昇し、体が火照り(ほてり)、汗をかく。そのため、ダイエットに効果がある、といわれる。

しかし、これは正しくない。なぜなら、体温の上昇、体のほてり、発汗など、エクササイズをしたときと同じような状態になるが、状態は同じでもその状態を引き起こした原因は全く異なる。

ダイエットに効果があるのは、エクササイズだ。エクササイズをしなければ、エクササイズをしたときと同じ状態が起きていても、その状態はダイエットとは関係ない。

以上の理由より、唐辛子を食べると体温の上昇、火照り、汗をかく、などのエクササイズ後におきるのと似た症状が起きるが、これらはエクササイズとは関係ない原因で起きたものであり、ダイエットとは関係ない。

したがって、唐辛子を食べてもダイエット効果はない。

7.まとめ

唐辛子を食べると、火を噴くような猛烈な辛さとともに、体が熱くなり、汗が出てくる。そして、気が付くと食欲が増している。

食欲が増す理由は、実は唐辛子の刺激に対処する際に消費されたエネルギーを補給するためだったのだ。

そして、その補給は蓄積されている脂肪からではなく、食事により補給することを体は要求する。そのために食欲が増したのだ。

唐辛子を利用する際の参考にしていただきたい。