唐辛子によるダイエット

唐辛子はダイエット効果のある食材として有名だ。それに関する情報もweb上に豊富に掲載されている。

しかし、唐辛子を食べるだけで、運動せずに痩せたという方にはなかなかお目にかからない。唐辛子を食べて痩せたと言う方もいるが、詳しくお話を伺うと

  • 唐辛子を積極的に食べるようにし、加えて運動
  • 唐辛子を積極的に食べ、食事にも注意

という方が多い。

どうしても気になるので、唐辛子によるダイエットの仕組みについて調べてみた。ここでは、その結果をご紹介する。

なお、非常に長くなっていると共に、内容的に非常に面倒くさく、分りにくいものになっている。ただ、よくお読みいただければ、必ずご理解いただける内容となっているので、繰り返しお読みいただきたい。


1.唐辛子ダイエットの仕組み

結論から申し上げる。唐辛子を食べても、それだけでは脂肪は燃焼しないのでダイエット効果はない。

この理由を以下に順序立ててお示ししていく。

2.カプサイシン

唐辛子ダイエットの主役は、カプサイシンという成分だ。このカプサイシンが脂肪を燃焼し、その効果としてダイエットにつながる、と言われている。

実際、唐辛子を食べると、体がほてって熱くなり、発汗する。確実に体温が上昇していて、まさに運動したのと同じ状態になっている。どう考えても現象的には脂肪が確実に燃焼されているとしか考えられない。

3.カプサイシンの機能

しかし、カプサイシン自体が脂肪を燃焼するというデータは存在しない。そう、カプサイシンには、脂肪を燃焼する機能はないのだ。では、カプサイシンの機能は何だろうか?

唐辛子を食べることを通じて体内に入り、胃や小腸で吸収されたカプサイシンは、血液によって脳へと運ばれ、内臓感覚神経を刺激して、アドレナリンの分泌を促す。

4.アドレナリンの分泌

ここでアドレナリンが出てくる。アドレナリンは非常に有名な物質だが、これは神経が興奮することで分泌されるホルモンの一種だ。闘争か逃走かのホルモンといわれ、戦いに臨むときや、逃げなければならないときに脳から分泌される。

そして、アドレナリンが分泌されることにより、心拍数の増大、血管の収縮、体温の上昇、発汗などが引き起こされる。

ここで注意したいただきたいのは、心拍数の増大、血管の収縮、体温の上昇、発汗だ。これらの現象は、運動したり、驚いたり、冷やっとしたりすると引き起こされる。

5.アドレナリンの分泌で引き起こされる症状

このうち、ダイエットにもっともつながりが深いのが運動だろう。運動すると、心拍数が増大し、体温が上昇し、発汗する。運動の強度が強ければ強いほど体温が上昇し、大量の汗をかく。

さらには、運動は驚いたり、冷やっとしたりとは無関係だ。すなわち、運動による体温上昇や発汗は、驚いたりや冷やっとしたりとは無関係だ。当たり前だが。

では、一方の唐辛子を食べるはどうだろうか?こちらも驚いたりや冷やっとしたりとは全く関係ない。唐辛子を食べるとアドレナリンが分泌されて体温が上昇したり、発汗したりするが、それは驚いた結果でもないし、冷やっとした結果でもない。

6.唐辛子とアドレナリンの分泌

では、なぜ唐辛子を食べると体温が上昇したり、発汗したりするのだろうか?この現象はどのように説明できるのだろうか?

こう考えると納得ができる。すなわち

  1. 運動による体温上昇、発汗は刺激による代謝の促進だ。その結果として脂肪が燃焼する。唐辛子を食べたときも同様に、体温上昇、発汗が起こる。
  2. 体温上昇、発汗は、脂肪が燃焼したときに起こる現象であり、唐辛子を食べるとほぼ同じ現象が引き起こされるのだから、唐辛子を食べると代謝が促進されて脂肪が燃焼され、ひいてはダイエット効果につながると考えても問題ない。
  3. さらには、運動時にもアドレナリンは分泌される。すなわち、唐辛子を食べるとアドレナリンが分泌されるが、これは運動時にも分泌されるのだから、唐辛子を食べた効果は、運動した効果と同じだ。
  4. このように考えると、すべてのつじつまが合い、唐辛子を食べるとダイエットできる、という結論が得られる。

ということになる。と思うが、これはそうではない。

7.アドレナリンの分泌と脂肪燃焼

先に、驚いたり、冷やっとしたりするとアドレナリンが分泌されると書いた。
アドレナリンの分泌により代謝が促され、脂肪が燃焼されるのであれば、唐辛子を食べるよりも驚いたり、冷やっとしたりするたびに痩せることになる。

しかし、前述したようにアドレナリンが分泌されても代謝は促されないし、脂肪は燃やされない。アドレナリンは、そういう物質ではない。

8.体内でのアドレナリンの機能

アドレナリンはストレス反応の中心的役割を果たす物質だ。血中に放出されると心拍数や血圧を上げ、瞳孔を開き、ブドウ糖の血中濃度(血糖値)を上げる作用などがある。

アドレナリンが分泌されることにより、心拍数があがるので血液の循環が促進され、体のすみずみまで酸素が供給されやすくなり、ブドウ糖の血中濃度が上がるため、代謝が進みやすくなる(この段階ではまだ進んでいない)。

つまり、アドレナリンが分泌されると、代謝が進みやすくなる。つまり、脂肪が燃焼されやすくなる。アドレナリンが分泌されていないときよりも、脂肪が燃焼しやすい状態になっているのだ。だから、このときに代謝進めてやれば、アドレナリンが分泌されていないときよりも脂肪が効率よく燃焼する。

唐辛子を食べても痩せない。食べて運動すれば、食べずに運動するときよりも脂肪がよりよく燃える。よりよく減量につながる。よりよく痩せることができる。

何度も申し上げる。唐辛子を食べるだけでは痩せることはない。ただ、食べずに運動するよりも食べて運動した方が効率がよくなる。

唐辛子を食べると、体が火照ってきて、汗が出る。あたかも運動しているような状態が引き起こされる。しかし、これは運動しているような状態なだけであり、運動はしていない。この状態を利用して運動すれば、代謝が促進され減量につながるが、運動しなければ減量にはつながらない。

9.唐辛子と食欲の増進

唐辛子を食べると、食欲が増進するのは有名な話だ。

食べる、という行為も運動と同じく代謝の促進につながる。唐辛子を食べると、アドレナリンが分泌されて心拍数が増大し、ブドウ糖の血中濃度が上昇して代謝が促進さらやすくなる。

10.やる気とアドレナリン

たとえば、スポーツをみて興奮し「よし、自分もこの競技をやってみよう」と思う。このときにもアドレナリンが分泌され、心拍数の増大、ブドウ糖の血中濃度の増加が行われる。スポーツをみた刺激により神経が興奮し、アドレナリンが分泌される。つまり、やる気になるとアドレナリンが分泌される。

しかしこのときに、たとえば唐辛子を食べた時のように食欲が突然わいてきてドカ食いするとか、危険が迫って逃げる衝動に駆られるとか、そういうことはない。あくまでも、見たスポーツに関することをやってみようと思う。

驚いても、その時の状況により戦う準備をするとか、逃げる準備をするとか、それぞれ異なる。

これは唐辛子を食べたときも同じだ。食べているので、食べるという行為についてやる気が起きる。食べることで起きるやる気は、食欲がわく、ということだ。だから、唐辛子を食べると、食欲が増進するのだ。唐辛子を食べて「よし、筋トレ準備完了!!」という方はほとんどいないはずだ。

唐辛子を食べると、アドレナリンが分泌されて心拍数が増大し、ブドウ糖の血中濃度が増加して代謝促進の準備が整う。

しかし、この時点でその状態を運動に向けるのはなかなか難しい。「唐辛子を食べるのは、運動の準備」「トレーニング前に、唐辛子」と考えて唐辛子を食べるのであれば、運動の効率があがると考えることもできる。つまるところ、ウォーミングアップの代役として唐辛子を食べることになる。

もっとも、運動におけるウォーミングアップは、激しいエクササイズを行うために準備の意味を持つ。唐辛子を食べるだけのウォーミングアップで、激しいエクササイズに臨むのは危険だ。やはりきちんとウォーミングアップはしたほうがよい。

ただ、唐辛子を食べて、ストレッチなどの比較的強度の低い運動を行うと、食べずに行うときよりも高い効果が得られると考えられる。なぜなら、唐辛子によって代謝が促されやすくなっているからだ。

11.まとめ

いかがだろうか?非常に面倒くさい内容と展開で、お疲れになったと思うが、唐辛子のダイエット効果についてご理解いただけただろうか?

唐辛子を食べると、体が熱く、ほてってきて、汗をかく。そして、口の中は火がついたように辛く、刺激的だ。運動して得られる脂肪の燃焼をイメージするのは無理もない。

しかし、今回のように細かく見ていくと、唐辛子を食べて起きる体の変化と脂肪の燃焼は、全く関係がないことがわかる。

むしろ、食べるだけで脂肪が燃焼されるというのはあり得ない現象と考えたほうがいいだろう。なぜなら、脂肪の燃焼は代謝に伴うものであり、それは筋肉の刺激により発生するものだからだ。

ただ、唐辛子を食べると代謝が促されやすい状態になっているので、それを利用して、それに見合った運動をするとそれなりの効果を得ることができるかもしれない。

唐辛子は、ダイエットの補助として考えるべきであろう。あなたのダイエットの参考にしていただければ幸いだ。

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