冬は寒い。寒いので動きたくなくなる。しかし、冬は代謝が上がる季節であることをご存じだろうか?
そして
- 代謝があがる
と言えばダイエットだ。そのため
- 冬の寒さをダイエットに利用する
というようなことをしばしば耳にする。
たしかにダイエットのターゲットは代謝の向上だ。いかにして代謝を促すかがダイエッ成功トの鍵を握るといっても過言ではない。
だから、
- 寒い時期の代謝の向上をうまく利用すれば、ダイエットの効率もアップする
というイメージを持つのはごく自然な流れだ。
しかし一方で、寒い時期に
- ダイエットに成功した
という人には、あまりお目にかからない。これはどういうことなのだろうか?
ここではそんな、寒い季節の代謝アップのダイエットへの利用について考えた結果をご紹介する。
1.寒い季節のダイエットへの利用
結論から申し上げる。寒い時期の代謝アップは、ダイエットへの利用はできない、もしくはほぼ不可能だ。その理由は後ほど述べさせていただく。
ただ、寒さを利用してエクササイズに励み、それをダイエットに利用することはできる。しかしこれは寒い時期の代謝向上とは関係ない。
寒いから運動して体を温めているだけで、その結果としてカロリーが消費されているのだ。寒いので代謝がアップするということとは何ら関係はない。
2.気温の低下は体外環境の変化
気温の変化は、いうまでもなく体外環境の変化だ。体外環境の変化は、ある程度なら問題ないが、ある限界を超えた変化は体にとってあまり良いものではない。
イメージで言えば
- 暖かい
- 涼しい
は問題ない範囲だろう。しかし
- 暑い
- 寒い
と感じるあたりから徐々に問題になってくる。そしてこれらが極端になってくると、もはや生命にも危険が及ぶようになる。それが
- 熱中症
- 低体温症
というものだ。こうなってくると、もはや単に
- 気温の変化
とばかり言っておれず、
- 環境の急激な変化
- 外敵の侵入
レベルの扱いになってくる。
3.生命の維持に影響を及ぼす変化
すなわち、生命の維持に影響を及ぼすレベルになると、体はその変化を危険と認識し、その危険を回避して生命を維持することを最優先する。
3-1.気温の変化による生命への影響
気温の変化が生命にどのような影響を及ぼすのか考えてみる。
冬は、気温が低下する。それに伴い、人の体も冷やされ、体温がどんどん奪われていく。
体温が奪われて体温が低下すると、代謝をはじめとする生命を維持する機能が低下していき、最後には停止、すなわち死に至る。これが低体温症だ。
3-2.体は生命を維持しようとする
しかし、体温が奪われるのをそのままにしておくことはない。体は
- 代謝を促して熱を産生
- 体を収縮させて表面積を小さくし、熱が逃げないようにする
- 脂肪を蓄えて体内と体外の間に脂肪の層を置き、不必要な熱の放散を防ぐ
これらを同時に行う。そして、これらを行うために、冬以外の季節よりも代謝がアップするのだ。
だから、寒い時期の代謝アップは危険回避の一環で行われていると考えたほうがよい。当然ダイエットとは一切関係ない。
3-3.熱の産生
ところが、熱を逃がさないように頑張っても、どうしても熱は逃げてしまい、体温は低下する方向へシフトする。
そのため、低下へシフトしてしまう体温を維持するには、代謝をアップさせて熱を産生しなければならない。このときに体内に蓄積されている脂肪が利用される。
そのため、
- 寒い時期は代謝がアップする
のだ。だから、寒い時期の代謝アップは体温の低下を回避するために行われるものだ。
一方、体内での熱の産生は、代謝によるもののほか、
- 温度の高いものを取り入れる
- 温度の高いものに接触する
などにより行われる。1.は温かい飲み物や食事であり、2.はお湯に浸かったりである。
3-4.保温
3-4-1.体の表面積を小さくする
寒いと体が前かがみになり、どうしてもちぢこまった恰好になる。横たわるときも、足をまげて体を丸めるような姿勢を取る。
これらは体を小さくすることで熱が逃げる部分を減らし、体温が逃げないようにする保温のための体の機能だ。
また、鳥肌がたつことでお分かりのように、皮膚を収縮させて熱の放散を防ぐ。
体を小さくしたり、肌を収縮させるために筋肉が使われ、筋肉のそうした運動を行うための代謝にも蓄積されている脂肪が使われる。
3-4-2.脂肪を蓄え、熱の放散を防ぐ
さらには、体内で産生した熱が簡単に体外に逃げないように脂肪の層で保護する。この現象は、われわれもしばしば体験している。
それは、背脂ギトギトの熱々ラーメンだ。スープの上に背脂が浮いている。レンゲで背脂をすくって口に運んでもさほど熱くない。
しかし、背脂の下から出てくるスープが口にはいると、その熱さにびっくりしてしまう。つまり、表面に浮いている背脂でその下のスープが保温されている訳だ。
冬は、これと同じ現象を体が行う。つまり、脂肪を蓄えて産生した熱を逃がさないようにするのだ。つまり、体内の保温だ。
そのためには、体内に脂肪を蓄えなければならない。思い返してみれば、秋の旬食材は、糖類を豊富に含む。寒い時期に備えてエネルギーを蓄える。
冬の旬食材にも糖類を豊富に含むものが多い。脂肪の蓄積を継続して行うためだ。
4.代謝による減少分の補給
以上の熱の産生や保温には、蓄積されている脂肪が使われる。そして、使われた脂肪の減少分を補給源としては、外部からの栄養補給、すなわち食事が必要となる。
5.寒い時期と食事制限
では、先に述べた、熱の産生や保温に使われて減少した分の補給として、蓄積されている脂肪を使わせるべく、寒い代謝が上がる時期に食事を制限するとどうなるのだろうか?
代謝がアップするのだから、取り入れるカロリーを制限すれば蓄積されている脂肪が代謝に使われ、ダイエット効果を得ることができるはずだ。
結論から申し上げる。理論的には100%可能だが、実現はほぼ不可能だ。なぜなら、寒い時期の代謝アップはいわば危険回避の為のものだ。
「唐辛子を食べるとなぜ食欲が増すのか?」でもご紹介したように、危険回避のための代謝による減少したエネルギーの補給は直ちに行われるべきものであり、蓄積脂肪の動員などでまかなわれる性質のものではない。
そのため補給は栄養の摂取により行われなければならない。もちろん、これを脂肪で置き換えることもできないではない。しかしそうなるまでにはそれなりの我慢、ストレスが伴う。
食事制限に伴う我慢、ストレスは後々必ず過食などに形を変えて噴出するのは、火を見るよりも明らかだ。
6.まとめ~ダイエットのための代謝は、別にきちんと確保しなければならない
以上が寒い時期に代謝はアップするが、ダイエットとは無関係であり、ダイエットに利用するのはほぼ不可能である理由だ。
代謝がアップするといわれると、どうしてもダイエットと結び付けてしまうが、危険回避のための代謝はダイエットに利用できる性質のものではない。
なぜならそれは生命維持に必要不可欠なものだからだ。もちろんダイエットもある意味生命維持に不可欠だが、危険回避ほどの緊急性があるかというと、そうではない。
もちろん、寒いのでエクササイズにより体を動かして体を温め、結果としてダイエットにつながるのは良いことであるし、そのようにしたほうがよい。
しかし、これは寒い時期の代謝アップとはなんら関係はない。そのことはキチンと区別しておきたい。